様の第一印象ですか?
そうですわねぇ・・・親切な方だと思いましたわ。
それ以外・・・ですか?
・・・私、あの方の事とても好きですわ。
公演会場から少し離れた公園を散歩していると、突然視界が真っ黒になってしまい真っ直ぐ歩く事が出来なくなってしまいましたの。
他の方に迷惑になってはいけないとすぐに端の方へ移動しようとしたら上手く歩く事が出来なくて、もう少しで倒れてしまう・・・と思った所、通りかかった誰かが手を差し伸べて下さいました。
「大丈夫ですか?」
「・・・えぇ。」
「気分でも悪いんですか?」
「ちょっと急に目の前が暗くなってしまって・・・」
「貧血かもしれませんね。」
そのまま手を借りて側のベンチに座らせて頂いて、ホッと一息つきました。
うっすら目を開けると目に飛び込んできたのはまるで空をそのまま映したような、深い青の瞳。
「貧血の時は少し衣類を緩めて、足を高くして横になった方がラクなんですけど・・・」
「まぁ・・・存じ上げませんでしたわ。」
やはり一人で外出すると言うのは中々難しいものなんですのね。
そんな事も知らなかったなんて恥ずかしいですわ。
彼女の指示通り持っていたバッグを足元に置き、そこに足を置いて横になって衣類を少し緩めると体を覆っていた気持ち悪さが少し薄れました。
「本当、楽になりますわ・・・」
「こんな暑い中、帽子も日傘も無しで歩くなんて・・・昨日の気候情報で注意を呼びかけていたでしょう?」
「昨日は生憎シャトルで移動中だったので注意していませんでしたわ・・・」
「・・・結構のんびりした方なんですね。ラクス様って。」
私の額に濡らしたタオルを置いてくれた彼女はなんの躊躇いも無く私の名前を呼んだので、不思議に思い彼女の顔をじっと見つめました。
「あら?私、自己紹介しましたかしら?」
「貴女の事このプラントで知らない人なんていないですよ。それに、私・・・貴女のファンですから!」
そう言って少し照れたように笑った彼女の笑顔は、私の大好きな地球の太陽に良く似ていて・・・気分が悪く沈んでいた私の心をとても温かく包み込んでくれました。
私の気分が良くなるまで彼女は何度も額のタオルを変えてくれて、小まめに水を飲ませて下さいました。
そのおかげで暫くすると体を起こしても先程のような吐き気は無くなるまで回復する事が出来ました。
「おかげで楽になりましたわ。どうもありがとうございます。」
深々とベンチに手をついてお礼を言うと、彼女は顔を真っ赤にしてまるで鳥の羽ばたきの様な勢いで両手を顔の前で振って・・・その姿が、とても可愛らしく見えました。
「そっそんなっ!当たり前の事ですよっ!それにお医者さんが患者さんを見捨てるなんて出来ませんし・・・」
「まぁ、貴女はお医者様でしたの?」
「・・・正しくは医者の、卵。インターンなんです。」
「それでもお医者様に違いはありませんわね。」
「そう・・・ですね。」
お互い顔を見合わせてクスリと笑っている所へ、私の警護担当の方々がこちらへやってくる姿が見えました。
「あら?あらあら?失礼ですが今は何時でしょうか?」
「えっと・・・2時15分前ですね。」
「ラクス様!お探し致しました!!」
額の汗を拭いながら黒いスーツを着た方々はホッと安堵のため息を漏らしていました。
やはりお声をかけなかったのはいけませんでしたね。
彼らにも余計な心配をかけてしまいました。
私は彼らへ手短に事情を説明した後、先程まで世話を掛けてしまった彼女の方を振り向きにっこり微笑みながらまっすぐ手を差し出しました。
「今更ですが・・・貴女のお名前を伺っても宜しいですか?」
「えっ、そのっ・・・えっと。、・と申します。」
「それでは様?私と一緒にいらして頂けますか?」
「は?」
ワケが分からないと言う困惑顔の様の手を取ると、警護の方に急かされている為少し急ぎ足で近くに寄せてある車へ足を進めました。
「あっあのっラクス様!?」
「お医者様は患者をほおって置いてはいけないのでしょう?一緒にいらして下さいな。」
「でも私はっ」
「お医者様の卵、とおっしゃいますの?」
「その通りです。」
真面目な方・・・なんですのね。
自分の置かれた立場と相手の立場をきちんと考えて下さる。
私の周りにいる他の女性方とは全然違うんですのね。
そんな貴女だから私、お友達になりたいと思ったんですわ。
「もし具合が悪いようでしたらラクス様なら専属医がついているはずです。私が側にいても何も・・・」
「私が側にいて頂きたいんです。」
「え?」
「私が貴女を必要としているんですわ、様。」
車に乗って真向かいの席に座ると、私はギュッと様の手を握ってその目を真っ直ぐ見つめました。
貴女なら、全てを聞かずとも分かるはずです・・・そうですわよね?
やがて戸惑うように私から視線を外した様が小さくため息をついたかと思うと、最初に会った時と同じようなちょっと照れたような笑顔で私を見て下さいました。
「負けました。ラクス様のお役に立てるのでしたら、いつでも呼んで下さい。」
「あら、ラクス様じゃなくてラクスとお呼び下さいな。」
「そっそんなのダメですよ!!プラントの歌姫であるラクス様を呼び捨てなんて!!」
「様の前にいる私は『プラントの歌姫』ではなく、ただのラクス・クラインですわ。ですからほら、ラ・ク・ス とお呼び下さいねv様。」
顔色を赤から青へ、そして青から赤へ・・・本当に表情豊かですのね、様は。
ニコニコその様子を眺めていると、耳まで赤くなった様が戸惑いながら初めて私の名前を呼んで下さいました。
「あの、わかりました。ラ、ラクス。」
「はい!様v」
「でも、せめて貴女も私の事をと呼び捨てにして下さいませんか?」
「あら。ダメですわ。お医者様には敬意を払いませんと・・・」
「ええっ!?」
「ですから、貴女の事は様と呼ばせて下さいね?様v」
大きく口を開けていた様は本当に呆気に取られた表情をしていて、きっと理想と現実のギャップに苦しんでいらっしゃるんでしょうね。
でも私はもっともっとあなたの事を知りたいし、歌姫のラクスとしてではなくただのラクスの事も知って頂きたいと思いますわ。
でも今そんな事を言ったら貴女はきっと、先程の私と同じように貧血で倒れてしまうんでしょうね。
でも大丈夫。手当ての方法は先程様にキチンと教わりましたから、今度は私が様を看病して差し上げますわ。
それから様がお医者様へなる為の学校へ出掛けられたり、私が家を留守にする時以外は殆ど毎日会ってお話をするくらい仲良しになりました。
そして、間もなく様がザフトへの入隊を希望されたので・・・私が軍へ推薦いたしました。
本当は離れてしまうのは嫌だったんですのよ?
でも、あんなに必死なお顔をした様を見るのは初めてだったんですもの。
そんな顔をさせたのが、私ではない・・・と言うのはちょっと寂しい気もしましたが。
どんなに空間としての距離が開いたとしても、様と私の想いがすれ違う事はない・・・と
今でも心から信じていますわ。
第一印象、ラクス編
最初見た時からあの天然加減が可愛いなぁと思い、お気に入りでした。
でもそれからこんな単発でドリームを書くほど好きになるとは思いもよりませんでした(笑)
一応ヒロインがザフトに入隊するきっかけを作ってくれた人物と言う事とも・し・も連載を始めるのであれば絶対絡めたいキャラなので書いてみました(笑)
一応友情ドリームって事でvちなみにラクスは誰よりもヒロインの幸せを祈る人…と私の中では認識されています。
現在ヒロインの最有力恋人候補として認めているのは…アスランです(笑)
いいのかなぁ自分の婚約者なのに(苦笑)